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第８章
ゲツセマネ：オリーブ圧さく機
「ゲツセマネ」という語は、「オリーブ圧搾機」を意味する古いアラム語から来ています。このゲツセマネという名前は、主の捕縛の夜の庭での、イエス様の苦痛に相通じる重要な意味があります。オリーブの圧搾機（プレス）をオリーブの粉砕機（ミル）とたいていの人が同じと見る傾向がありましたが、私は、これを誤りだと考えます。
私は、聖書の地域で両方を見た事があり、それらは全く異なったものでした。
ぶどうやオリーブ用の粉砕機は実際に破砕のための装置です。個々のミルによって装置の細部は異なっていますが、基礎的な設計、操作方法は本質的に同じです。昔、農場で家畜に餌を与えるために使われた大きい旧式の鉄の大釜の様な、内部の底を丸くした石作りの大きい大桶があります。
この大桶の中に立てて入れられた石は、回転砥石のように車輪状に加工され、大桶の内の丸い輪郭に合うように作られています。この円形の石の中心には穴があり、長い木製の竿になった車軸の一方の端がしっかりと取り付けられています。ロバ、牛、または、ラクダなどの一頭の動物が、車軸の外側の端に繋がれ、円状に歩くことによって車輪を回転させます。大桶の中の車輪の回転によって、オリーブは、押しつぶされ、圧搾され、油が取り出されます。
同じ装置が、ぶどうを潰して、ジュースを抽出するために使わます。こちらでは大桶のある高さに排水口を設け、蓄積された液が隣の低い桶にあふれ出るようになっています。この圧搾の後に続いて、絞られたオリーブは、大きな洗濯おけのような形に織られたわらのかごに入れられます。これらは、油の最後の一滴まで絞り出すため、プレスの下に積み重ねられます。プレスは、巨大な重量がこの砕かれた果実を入れたかごにかかるように巧みに作られた装置です。一方の端で蝶番に付けられた長い重い竿は、積み重ねられたかごの上でカンチレバー（片持ち梁）にされています。おそらくは１トン以上の重さがあるおもりの大きな石が、離れた方の端にかけられます。
全ての油が絞り取られて、隣の石桶に排出されてしまうまで、竿のてこの仕組みによって、このおもりが積み重ねられたパルプのバスケットを圧搾するように、器用に動かされます。バスケットは、油が完全に絞られるまで数日間、圧力を加ええたままで置かれます。
ゲツセマネは、まさにイエス様のこの「オリーブのプレス」でした。
ゲツセマネは、人間の罪と罪科の重りであって、イエス様を身代わりの死によって押しつぶしました。全ての時代の全ての人間性のあらゆる罪と罪科は、我々の人間の想像をはるかに越えて、あまりにも大きく、そして、あまりにも重い荷であって、それは、文字通りにイエス様を地面に押しつぶしたのでした。
「プレス」の重みは、「彼の汗が血のしずくのように地に落ちた」(ルカ22:44)ほど大きいものでした。イエス様の激しい苦しみは、「『地面にひれ伏し、もし、できることなら、この時が自分から過ぎ去るように』と祈り、また『アバ、父よ。この杯をわたしから取りのけてください。』」(マルコ14:35,36)と、言われたほどでした。
しかし、イエス様は重圧と激しい苦痛に打ちのめされたにもかかわらず、言われました。「『わたしの願いではなく、みこころのとおりにしてください。』すると御使いが天からイエス様に現れて、イエス様を力づけた」(ルカ22:42,43)。聖書は、イエス様が我々の罪を負い、イエス様ご自身の人間としてのおからだで、その罪の恐ろしい重さと、激しい苦痛を持ちこたえることは、ふつうの人間としての肉の能力を越えていたとはっきりと宣言しています。
ゲツセマネとゴルゴタとに連携されたオリーブのプレスの具象化は、イエス様のみことばの真の意味を理解するのに役立ちます。「わたしには受けるバプテスマがあります。それが成し遂げられるまでは、どんなに苦しむことでしょう」(ルカ12:50)。
いままで私はゲツセマネを、オリーブプレスの大きい石の重りで絞られるオリーブとして、心の目で見たことはありませんでした。ゴルゴタと同様に、ゲツセマネにおいても、わたしたちは祈りましょう。「おう、神の子羊。その時の様子を私の前に再現したまえ。私を覆う影となって日毎の歩みを助けたまえ」（ファニー Ｊ．クロスビー）
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